頭で理解できないものをどう捉える?| 石黒講師インタビュー vol.6

JMA洋上研修「J-EXCEED第1期」アメリカ西海岸9日間デザイン・シンキングコースの石黒講師にインタビューさせていただきました。
(以下敬称略、お役職はインタビュー当時)

インタビュアー 一般社団法人日本能率協会 安部

頭で理解できないものをどう捉える?

安部
今日のインタビューで何度も「本質」という言葉が出てきたので、今回のインタビューのキーワードではないかと思います。
私もいつも本質を追及しているつもりなのですが、自分が本質を捉えているかどうか、常に不安を感じています。
石黒さんはご自身が本質を捉えているかどうかを評価するKPIみたいなものをお持ちですか。

石黒
新しいものを作れなくなります。
まずリサーチして本質をいくつか作り、それを表現します。でも、表現の過程で矛盾があると、新しいものを作れなくなるのです。

安部
形にならないわけですか。

石黒
形にならないか、もしくは頓挫します。
感覚的にいうならば、想像したり実現させたりしているプロセスの中で、推進力を強めている要素は最後まで残ります。ものを作ったり、資料を作成したりしているときに、常に自問自答を繰り返しています。
もし、ものづくりをしているのなら、結果としてつまらないものになったときは、多分間違っていたのだと思います。

安部
捉え切れていないのだから、元のオブザベーションに戻るべきなのですね。

石黒
そうするか、もしくは見返してみて評価や観察の仕方を変えることをやりますね。

安部
デザイナーとかものづくりとか関係なしに、不確実な時代の中で生活するみなさんにとって、必要なプロセスのように感じました。

石黒
本質は感覚知をフル活用しないと理解できません。
本質は頭では理解できないものなのです。ものづくりのプロセスにしても、頭から集中して作っていると、途中であまり考えなくなることがあります。
正しいか正しくないかを決めるのは、表現されたものと接した時、試作できたもの、実現できたものです。

本質を捉えられているかなどと考えることがあまりいいことでなく、そこは考えずに本質だと感じたら何らかの形でプロトタイプにする方がいいでしょう。もしくは感覚知を通さない方法で無意識のうちに暗黙知の中で対話できる状況を作り、これが正しいのか正しくないのか表現してみるというやり方です。
答えになっているかどうかよくわかりませんが、そういう部分が非常に重要になってくると思います。

安部
暗黙知に持っていこうという感覚ではだめなのですね。

石黒
捉えようとしたらだめな気がします。
難しいですよね。本質は何かとよく聞かれますが、本質を一生懸命に考えるのはあまり健全に思えません。
本質は何かというときはそれを何らかの形に転換し、意見をもらうべきです。

安部
体験を話すとか、思ったことを語るとかでしょうか。

石黒
そうなのです。
本質を考えると自分が自分の頭の中でループしますが、絶対に答えが出ないでしょう。
そこが大切に思えます。

安部
インプットとアウトプットがないと成り立たないのですね。

石黒
自分から出し入れするなどをすべて自由で活発にやるのがデザイン・シンキングです。

安部
本当に難しいですよね。
人それぞれ本質の捉え方が違いますし、認め合うことも大事です。

石黒
本質を安易に頭で捉えようとすると、概念が過剰に広くなります。
例えば「健康」「安心」とか、イメージし易く膨大な情報量を持つ言葉に行き着きがちです。
そしてとてつもなく広く曖昧な言葉になってしまいます。それでは本質を捉えていることになりません。

できるだけピンポイントに、どういった健康なのか、健康状態がどうなのかをうまくつかまえないと、使える本質にならないのです。広くは捉えやすいが、そこに確信を持って限定化していく、そこが本質という言葉をよく使う人でも悩むところではないでしょうか。
それくらいデザイン・シンキングは難しいわけです。

安部
ありがとうございました。

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